1.気球
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
何千機もの気球が
ゆっくりと地上を離れていく
虹色の荒野
年老いたぼくらがいた
植物も思い出も
かたちをとどめないよ
ここは最後の国
ぼくらは孤独なアインシュタイン
互いの声 耳も貸さず
もうすぐおしまいだと
誰もが信じていたけど
ここはおじいちゃんとおばあちゃんの国
それはただのながい幼年期みたい
トンネル抜ければそこはまた大きなトンネルのなか
いつから列はここでつっかえていたのか
眼を閉じ 耳を塞ぐ
誰かの温度も忘れた
迷走するボロい機械
それでも歯車は
チクタク回転している
金属の粉振りまいて
チクタク回転している
眼を閉じ 耳を塞ぐ
ぼくらは孤独なアインシュタイン
震える夜の闇に
これは、はじまりかも
ただただ気配がしている
とっくに無視はできないよ
あなたは孤独なアインシュタイン
空想する春のマシン
これははじまりだよ!
ここは歴史のまんなかさ
ここは歴史のまんなかさ
チクタク回転している
2.砂漠
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
砂時計を 風 吹き荒れる
時は過ぎ ただ 吹き溜まる
砂時計が 木々を揺らせば
果物は種を宿して浮かぶ
結わえ 結わえ
電極を地表に
それが真実だ
曲線 せまる波うちぎわ
はりつめた糸 針の先
終わりは悲しい
誰も知れない
砂時計を 風 吹き荒れる
時は過ぎ ただ 吹き溜まる
人 消えた昼の都会で
たちのぼる煙草の煙
結わえ 結わえ
電極を地表に
それが真実だ
曲線 せまる波うちぎわ
はりつめた糸 針の先
毒 孕んだ花が咲いたのさ
遥か古代のテレビドラマ
種子まとって 砂漠は拡がる
最後まで
終わりは悲しい
誰も知れない
砂時計を 風 吹き荒れる
時は過ぎ ただ 吹き溜まる
3.皿(ハッピーファミリー)
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
パーティーは続いている
終わりそうに見せかけているが
ケチャップで引いた国境に
ピザはほぼ型崩れ
我が子は大切だよ
他人の子よりも
みんな賛成だよ
友達だものね
友達だものね
あのとき略奪してしまってごめんね
欲望が欲してるのは
欲望そのもの
遊びさ ただの遊びさ
パーティーは続いている
クラッカー打ち鳴らしてさ
コーラの油田 奪い合う
冒険小説 深読みしながら
我が子は優秀だよ
他人の子よりも
みんな賛成だよ
友達だものね
あのとき略奪してしまってごめんね
欲望が欲してるのは
欲望そのもの
400年前のあの混乱をうまく再現するのさ
思い出せるかな
遊びさ ただの遊びさ
4.起爆
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
きみは戦争に興味がないしね
戦争はきみに興味がない
しね
5.投擲
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
デスレースだ
丘のまんなかで
白いコンバースと
青いたてがみで
目の前の 何もない草原
先発はまだ帰らない
それでも
とびだせば すぐに夢中になるさ
身体 投げだすだけ 凍る草原へ
客席も
カメラ 放送席
失格までも
ない
コースもない
選手の眼 映る万国旗
飛ぶヘリコプター 乾いた風
迷いなくとびだせば 不安は消えるものさ
記録叩き出すだけ 凍る草原へと
ハイライトはCMの後で
スポンサーは周知のとおり 神さま
銀行家の庭で様子うかがっている
ゲーム結果はCMの後で
スポンサーは周知のとおり 神さま
いつも一等賞
死者は一等賞
花をくわえさせられ話せない
隠されたことが隠されている
人間を知り抜いた よくできたルールだ
6.穴
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
誰ひとりいれるな
その穴のなかには
年齢 性別問わず
年収 国籍問わず
誰ひとりいれるな
そのようにきいております
誰ひとりいれるな
その穴の内部を
のぞいた男がいた
砂丘から望遠鏡で
翌日 風邪ひいた
そのようにきいております
7.空地
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
門を出てどこかへと行くよ
肥えた土地には貧しい果てがあると
知っていても
高く伸びるビルにだって限りはあるし
無視をするや否や 雷 落ちるよ
おもいの丈を叩きつけろ ある男はいうけど
良くいえばオールドファッション ただの時代遅れ
きみの声は聞こえたけど 言葉は届かない
そうさ
水彩画に描いた曇り空を
ベランダのホースでもって
洗い落としてみれば
そこにはなにがある?
ただのぬれた紙がある
8.塔(エンパイアステートメント)
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
ビラを撒いた
エンパイアステートビルの屋上から
観光を装って
地下鉄のぼれば五番街
見上げた
都市を賑やかす大晦日
歩いた
眩しい身体を横たえた
浴槽で
眠れるゲストに告ぐ夜の
警報
ハレルヤ!
ニューヨーク午前0時
ベトナムは正午過ぎ
ニューヨーク午前0時
ヴァレッタ朝の6時
ビラを撒いた
輝く夜の地上に
浮かぶ髑髏たち
アーティストが踏み潰した
みんな傷ついた羊飼い演じた
著名人たちがもみ消した王国
ハレルヤ!
ニューヨーク午前0時
ベトナムは正午過ぎ
ハレルヤ!
ニューヨーク午前0時
ヴァレッタ朝の6時
ハレルヤ!
新宿午前0時
ニューヨーク朝10 時
ハレルヤ!
新宿午前0時
ニューヨーク朝10 時
血で血を洗う
血で地を洗う
9.真夜中
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
今日の放送は終了したと
そっけない画面のテロップ
遠くのクラクション サイレンの音
彼女の夜はやかましい
見えない虫が一匹
聞こえない声で質問攻めさ
彼女の夜はやかましい
理由を述べよと 執拗に
鳴り止まない囁きに
眠れそうにないなら
一晩じゅう一緒に起きていても
いいよ
深夜のタクシー 気怠く流れる
国道 死神 鎌を振る
ヘルツ博士のよどんだ眼に
真夜中のトロフィー
誰かがギターを弾いている
もう うんざりだ
彼女の夜はやかましい
理由を述べよと 執拗に
鳴り止まない囁きに
追いつめられ壊れそうなら
一晩じゅう夜を傷つけても
いいよ
いいよ
10.夏至
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
ぼくは静かにページめくった
黴の匂いにきみは目醒めた
ああここはどこからも
遠ざけられた場所
海は風に凪ぐ
物いわぬ便箋のように
鳥は静かに翼たたんだ
夏がおわれば夏がはじまる
過ちをおかした
海辺の行列
途方に暮れ微睡む
罰を忘れられて
止まる世界でページめくった
いまも目次に たどり着けない
いまも目次に たどり着けない
11.潜水
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
もう おやすみ
ここはどうみても公平な世界
手近な価値をはかるまえに
天秤を疑ってみてごらん
一度でも昼に夢をみたら
おめでとう
どんな色をしているの?
どんな味がするんだ?
人がいつか飛び込む
海の底はさあ
誰も知らないことは
一番近くにあるよ
誰も知らないことは
もう おやすみ
皿の上 織りなす凡庸な舞台
余った役は残っていないのさ
そこは帰るべき家ではない
演じる場所を今も探しているんだね
どんな色をしているの?
どんな味がするんだ?
人がいつか飛び込む
海の底はさあ
誰も知らないことは
一番近くにあるよ
誰も知らないことは
優しい人をさがすのはやめたよ
飛び込む海はきみのもの
どんな色をしているの?
どんな味がするんだ?
きみがいつか飛び込む
海の底はさあ
どんな色をしているの?
どんな味がするんだ?
きみがいつか飛び込む
海の底はさあ
12.新聞
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
円の中心に立って雨を待ち望むとき
人は守られている 空想の卵のなか
もう一歩も踏み出せない
外の世界で砂埃が舞っている
ラジオが放送されている 息も絶え絶えに
夜の闇を瞬くシナプスの列
カメラのフラッシュ
ショーウィンドウ
円の中心に立って雨を待ち望むとき
人は守られている 空想の卵のなか
誰かが何かを吹き込んだ
頭のなか テープレコーダー
人はそれを記憶と呼んだ
頭のなかテープレコーダー
原音を忠実に再生していると誰もが口をそろえて
新聞紙はそう言った
雑音に満ちた数世紀をまたぐ
名前が足りない
名前が見つからない戦争があって
言葉がだぶつく
言葉があり余る季節がきた
いつでも視線を感じている
新聞紙はそう言った
暴風雨が踊る
おびただしいアンテナをなぎ倒して
それは人間のようなかたちをしている
それは鳥のようなかたちをしている
それは衛星のようなかたちをしている
それは電波のようなかたちをしている
それは塔のようなかたちをしている
それは箱のようなかたちをしている
名前が足りない
名前が見つからない戦争があって
言葉がだぶつく
言葉があり余る季節がきた
いつでも視線を感じている
新聞紙はそう言った
雑音に満ちた数世紀をまたぐ
13.船
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
夜は黒い
夜は深い
放送はこれでおしまい
住宅街 眠る気配で
子供が泡立つのさ
朽ちた灯台から船は出る
浮かぶ 浮かぶ 浮かぶ
消える
夜は黒い
夜は深い
つまさきを浸し遊ぶ
土深く秘めた熱で
子供は気化していく
霧立ちこめる沖へ船は出る
浮かぶ 浮かぶ 浮かぶ
消える
石炭の臭いで犬が乾いた
霧の向こうでラッパが鳴り響くのさ
夜は黒い
夜は深い
放送はこれでおしまい
住宅街 眠る気配で
子供が泡立つのさ
朽ちた灯台から船は出る
14.脱皮後
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
きみが持つピカピカの腐らないやつを
ちょうだい ぜんぶちょうだい
透明な樹液に集まる
うつろな目した昆虫たち
あしたはどこへ行こう
孤立無援のまま
それだけできみは腰抜けではない
君が乗る戦闘機のなか
花 敷き詰めて 贈るよ
はじめから抜け殻だったら
もっと世界が好きになれたかな
あしたはどこへ行こう
孤立無援のまま
それだけできみは腰抜けではない
15.鉱山
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
聖なるビルのふもと
電磁波の降るなかを
ぼくは歩いて帰ろう
見上げた空は虹色
螺旋の樹にのぼる
21人の子供
朝を隠して 夜を消す
山は静かにたゆたう
帰ろう
聖なるビルのふもと
電磁波の降るなかを
ぼくは歩いて帰ろう
見上げた空は虹色
16.開拓地
作詞:Hatano
作曲:People In The Box
月を漂白してみることはできても
ふれることはできない
いつも手ざわりはこの手のなかあるけど
冷たく圧し黙ったまま
向かい風のなか目を凝らしてみれば
空っぽの小屋が佇んでいる
その歪なかたちした楽器の
名前を誰も知らない
歌をおぼえたての外国語で歌う
帽子深く隠れて
向かい風のなか目を凝らしてみれば
空っぽの小屋が佇んでいる
強い強い風が 強い風が
強い強い 強い風が吹いた
向かう場所はいつでも荒れ地だった
虫たちは土に凍る
遮るものもなく 隔てられもしないけど
それは迷路だった 途方にくれた
ようこそ
ごきげんいかが
孤独な旅人
おなかが空いたら
食事にしようよ
ようこそ
ごきげんいかが
祈りが終わったら
食事にしようよ
おなかが空いたら
食事にしようよ
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